書くことは、「選ぶこと」の練習
書けない日は、自分の「ものさし」を見つめ直してみる
こんにちは! りらの花です。
私は最近、「書く人は、自分だけのものさしを育んでいる」と思うようになりました。
これまで30年以上、文章を書く仕事をしてきましたが、書けない理由は文章力ではありません。
必要なのは、「自分だけのものさし」です。
ここで言う「ものさし」とは、文章の善し悪しを測る定規のことではなく、何を大切にし、何を基準に言葉を選ぶのか。その人だけの判断基準のこと。
朝、庭に咲いた一輪の花を見た。
ある人は、「気づいたらすっかり花が開いていた」と季節の移ろいを書くかもしれません。
ある人は、「この花を見て、亡くなった祖母を思い出した」と、自分の記憶を書き始めるかもしれません。
同じ花を見ていても、心が向かう先は人それぞれです。
それを決めているのが、その人の「ものさし」です。
私自身も、何らかの理由や事情でこの「ものさし」を見失っている時は、四苦八苦しながら書いています。
反対に、「ものさし」が整っていると、言葉が淀みなく出てくるのですよね。不思議なことに。
文章を書くことは、「選択」の連続です。
テーマやお題選びからはじまり、どのエピソードは入れて、どの話題は入れないのか。
どんな文体、言葉を使い、どこまで詳細に書き込むのか。自己開示はどこまでするのか。そして、どこで話を終えるのか。結びの言葉はどうするのか。
こんなものでは足りないくらい、何百、何千という小さな選択を積み重ねて、1本の記事を書き上げていきます。
これまで幾度となく、「書けない」というご相談を受けてきました。
その度に、お伝えしてきたのは「とりあえず書きはじめよう」とか「まずは構成を決めよう」といった、ありきたりのアドバイス・・・。
けれど最近は、文章そのものではなく、その方の「ものさし」、判断基準、選び方に注目するようになりました。
なぜなら、「書けない」の本質は、自分の中の「何をよしとし、何を捨てるのか」という基準が揺らいでいることにある、と気づいたから。
たとえば、無意識に「他人のものさし」で書こうとした経験はありませんか。
「こう書けば反応が得られるかも」「あの人のような言葉を使いたい」
そう思った瞬間、フリーズしてして言葉が出て来なくなってしまう。
同じ「今日のできごと」を書くのでも、ある人は「どれだけ効率的に動けたか」という効率の「ものさし」で言葉を選ぶ。
ある人は「誰とどんな心の交流があったか」という情緒の「ものさし」で言葉を選ぶ。
「書けない」と悩む人の話をよくよく聴いてみると、ご自身の心は「情緒のものさし」で判断しようとしている。
なのに、世の中の流れが「タイパ」や「コスパ」に向かっているので、「効率のものさし」で書こうとしてしまう。
そうした、ちぐはぐさが原因のことが多いのです。
私自身も、日々自分の「ものさし」を意識しながら言葉を紡いでいます。
推敲するときは、時間をかけて書いた段落でも、読み返してしっくりと来なければ潔く削除します。
反対に、たった一行でも「これだけは伝えたい」という言葉なら残します。
その判断を支えているのは、やはり自分だけの「ものさし」なのですよね。
そして、この「ものさし」は最初から完璧な既製品のようなものではありません。
書くたびに迷い、立ち止まり、問い直す。
その繰り返しのなかで、自ずと定まっていくものです。
そう考えると、「書くこと」は文章を書く練習というより、自分にとって何が大切かを見極めるための、「選ぶ練習」なのかもしれません。
どの言葉を残すか。何を削るか。何が大切なメッセージなのか。
その問いの積み重ねが、その人らしい文章を育んでいきます。
さらに面白いのが、この「ものさし」は文章を書くときだけ使うわけではありません。
仕事を選ぶとき。人との距離を決めるとき。あるいは、人生のターニングポイントで。
同じ「ものさし」を使って判断しているのです。
書くことで、文章が上達する。
でも、磨かれているのは文章だけではないのかもしれません。
何を大切にし、何を選び、何を手放すのか。
自分だけの「ものさし」も、少しずつ磨かれていく。
だから私は今日も、文章を書いているというより、自分の「ものさし」を磨いているのかもしれません。
✿ おりらちゃんの今日のまとめ ✿
あなたは、どんな「ものさし」で言葉を選んでいますか? 文章を書くときでも、日々の暮らしの中でも構いません。コメント欄で教えていただけるとうれしいです。
それでは、また次回のニュースレターでお目にかかりましょう。
「自分のものさし」を一人で見つけるのは、意外と難しいものです。
私が主宰する『ことばと書く人の寺子屋』では、毎月ひとつのテーマをもとに、問いを通して自分の考えや価値観を言葉にしていきます。
正解を探す場所ではありません。
自分だけの「ものさし」を少しずつ育て、自分の言葉で書き続けられる人になるための、小さな学びの場です。
「もっと自分らしい文章を書きたい」「書きながら、自分自身も深めていきたい」
もし、このテーマに心が動いたら、ぜひ仲間になっていただけたらうれしいです。





りらさん、魅了的なテンポで書いている方のを読むと、なんだか自分がめちゃくちゃのろまなカメの気分になることがあります。でも「自分のものさし」を使えばいいのですね。いつも参考にさせていただいています。ありがとうございます!
「他人のものさし」で書こうとした瞬間にフリーズする、という指摘が残りました。
書けない日は、文章が足りないのではなく、基準が少し借り物になっている日なのですね。
私の場合はたぶん、「これはうまく見えるか」ではなく、「これは自分の温度で残す必要があるか」というものさしで言葉を選んでいます。